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 日本初の女性総理候補と目される政治家たちの本音を聞く連続インタビュー。第2弾は、かつて「安倍晋三・元首相の秘蔵っ子」「タカ派のアイドル」と呼ばれた稲田朋美・元防衛相(63)である。「週刊ポスト」の新シリーズ《女性総理、誕生!》から飛び出したスピンアウト企画。3月18・25日号の第1弾(高市早苗氏)に続き、ノンフィクションライターの常井健一氏が斬り込んだ。【全4回の第2回。】

──昨年7月には自身の半生と政策をまとめた著書も出して、菅義偉政権の次を狙う準備をしていたようにも見えました。結局、総裁選出馬を見送ったのはなぜですか。

「出るために必要な推薦人20人を集める態勢がつくれませんでした。もう少し足腰を鍛えるべきやなって。政策面もそうだし、仲間づくりが足りてないって反省しました」

──もう少し詳しく教えてください。

「ええ。ひとつは、『伝統と創造の会』(通称・伝創会。初当選同期の保守系議員らでつくる「稲田グループ」)からメンバーが次々と抜けていく状況がありました。総裁選を考える以前の問題で、私に対する炎上騒ぎがはじまっていました」

──「炎上」ですか?

「『稲田は変節した』、『左翼に転向した』と批判されるようになって、伝創会のコアメンバーだった先生方が別の議連(『保守団結の会』)をつくり、離れていきました。保守系の月刊誌に私を攻撃する論文が次々と載って、そのコピーが怪文書と一緒に地元でもばらまかれたのです。地方議員や支援者の中にはそれを見て、『稲田はもうダメや』と思って。全国後援会の熱烈なファンでも去っていった人はいますね」

──昔、怪文書に悩まされたという話は第1弾(3月18・25日号)で高市さんもしていました。

「これが実物です」

──これが怪文書……。黄色の紙に、〈いつからこんなにリベラルになったのですか? これでも応援できますか? 元応援団〉とある。保守派の稲田さんがどうして「リベラル」と呼ばれるようになったのですか。

「私は政調会長時代(2014~2016年)に、LGBTと呼ばれる性的少数者の人権問題に取り組むようになって以来、(旧姓の使用を法的に認める)『婚前氏続称制度』の導入を提言したり、シングルマザーの貧困対策を議論する場を党内で立ち上げたりしてきました。私が掲げる国家像は『強くて優しい国』で、憲法改正や安全保障、皇位継承の主張は従来と変わりませんが、新たに『優しい』を重視した政策立案に力を入れはじめました」

──「優しい」の部分はこれまで自民党が弱かった分野。党の支持層を広げるうえでも現実路線だと思います。

「だけど、ハレーションが大きかった。たとえば、寡婦控除(離婚や死別でひとり親になった女性に対する税の優遇策)を未婚のひとり親にも適用しようとしたら、党内の壁が分厚くて。私は一人で子育てしている女性を結婚していたか否かで差別するのは素朴におかしいと思って改革しようと動いたら、男性議員の中には『未婚で子どもを産むのは、ふしだらな女性か、キャリアウーマンで、伝統的家族を壊す』といった偏見を発言する人がいました。 結局、伝統的家族を守るか否かという不毛な議論にいってしまったので、私は憲法14条(法の下の平等)の問題であると訴えました。党の税制調査会には『貧困対策』として税制優遇を認めようとした幹部もいましたが、それも問題の立て方が間違っています。税の公平性が問われていたんです。最終的には党内で署名運動をやって、賛同者はゆうに100人を超え、未婚のひとり親への寡婦控除が認められた。名称も『ひとり親控除』に変えました」

「わきまえない女」やから

──それからも女性活躍に注力した。それでまた保守派を敵に回した。

「話しかけても無視される。目も合わせてくれない人もいましたね、昨日まで仲間だったのに」

──男社会の逆鱗に触れてしまった。

「いや、女性からも煙たがられましたね」

──それは、精神的にも応えたでしょう?

「応えたんかな? 私、『わきまえない女』やから、偉い人を怒らすのは天下一品。去る人もいれば、来る人もいる。昨年の選挙では3回も怪文書をまかれて、『稲田朋美を落選させる会』っていう車がぐるぐる回ったりしたけど、すごく票が伸びた。どこのたまり場に行っても、今までにないくらい女性が来てくれました。やっぱり福井のような保守色の強い地域ほど閉塞感を抱えている女性がたくさんいて、そういう人が応援してくれるようになりました。2万票も増えたんですよ

──大都市から離れた地方にあって、コアな保守層を敵に回して戦える自民党議員はいません。しかも稲田さんの場合、それで支持層を拡大できた。

「だから、物事は突破してしまわなあかんのです。で、突破する時は最後がいちばんしんどい。最後の最後になると、『おまえ、やりすぎや』とか、『もうそのへんにしとけ』とか怒られる。でも、そこを突破できるかどうかだと思うんですね」

──なるほど。

「さっき話した寡婦控除の改革は突破できたけど、LGBT理解増進法案のほうは成立させられなかったので、まだ燻っちゃっているんですよね。クオータ制(候補者の一定比率を女性にする規定)も憲法14条を改正して、『実質的平等』っていう条項を入れないと、形式的平等で逆差別になる。フランスが憲法を変えて導入したんですけど、私が『憲法改正』と口にした途端、左派系のメディアからは『稲田の正体が現われた!』と叩かれる。もう、右からも左からも批判されているっていう状態です(苦笑)」

 稲田氏といえば、「右翼のアイドル」で、草の根保守運動の絶対的センターだった。教育現場で進むジェンダーフリーの流れが「過激」だとして、激しく反発してきた“闘士”が、いつの間にかウイングを広げていたことを知らなかった読者も少なくなかろう。

 総理を狙う保守政治家が、相反する立場の意見を寛容に取り込む姿勢に転じるのは珍しくない。かつての安倍政権も、歴史認識問題では右派の立場を貫き、安全保障では親米を鮮明にしたが、ロシアとの経済連携を深め、金融市場に躊躇なく介入しては、男女格差の解消にも積極的に取り組んだ。安倍氏本人は伝統的家族観を重んじる保守のイデオローグでありながら、国家の舵取りは「社会主義的」であるという二面性を持ち合わせていた。

 稲田氏は「全国民の代表」を意識するほど中庸に寄った。それも歴史と伝統にならえばごく自然な変化で、ある種の成熟だと思える。「一言で言えば、私は無知だったのでしょう。DVの問題とか興味がなかったし、クオータ制は逆差別だと信じていましたが、女性蔑視や男女不平等を改善することに右も左もない。やっぱり党の政調会長を務めて、いろんな当事者の話を幅広く聞く機会が増えると、私は共感力が強い人間だから『何とかしなきゃ!』って目覚めたんですよね。LGBTも、性別への違和感を抱く子どもたちが不登校や自傷行為に追い込まれる実態を知って、これまで苦しんでいる当事者の存在に思いが至らなかったことを反省しました。国会議員は全国民の意見は聞けないし、全国民の立場は理解できないけど、『正しいこと』のためであれば、自分が変わる勇気を持つべきだと私は思います」(全文は引用元へ…)

引用元 https://www.news-postseven.com/archives/20220318_1736113.html?DETAIL



みんなのコメント

  • 稲田がみずぽんに見える
  • 当たり前やん、予定通りやん
  • 終わるなら終わるで良いんだけど、頼むから静かに終わって欲しいんだよな。
  • 弁護士への信頼がどんどんなくなっていく…
  • 票のためなら何でもすると公言してるようなものか
  • えらそうに言うてるけど、答弁に詰まって泣くような人やからなあ
  • 記事にもあったけど、衆院選挙無いのにどうして2万票増えたと分かったんでしょうか。言っている事がおかしい
  • 皆んなひどいけど、この人は特別メチャクチャなんだよね
  • 女子トイレにオサーンが入ってくるようになったら この人のせいですよ~~ 福井の方
  • その2万票は何人なんだろう
  • 一時は女性総理候補と呼び声がかかった、しかしそれも今は昔

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