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>尊経閣文庫本『信長公記』によれば、この黒人は「弥助」と名付けられ、鞘巻の熨斗付(装飾刀)と私宅(屋敷)を与えられたという。この記述に従えば、弥助は明らかに信長の家臣、すなわち武士(侍)として遇されている。名字が与えられていないから侍ではなく、中間(侍より下の武家奉公人)なのではないかといった意見もネット上で見られるが、中間が刀と屋敷を与えられることは考え難い。いずれ名字が与えられる予定だったという解釈が成り立つだろう。加えて、弥助は時に信長の道具持ちもしていたというから、信長に近侍していたと考えられる。
>前述したように、宣教師のロレンソ・メシヤは「人々が言うには、(信長は)彼(弥助)を殿にするであろうとのことである」との噂を記している。「殿」と言うからには、一国一城の主とまで行かないにせよ、弥助が知行を取り家臣を抱える身分になるということだろう。
>尊経閣文庫本『信長公記』に見える、弥助に対する信長の厚遇を考慮すると、弥助が「殿」に取り立てられるという噂もあながち的外れとは言えないかもしれない。ただし、弥助が刀と屋敷を与えられたという記述が、『信長公記』の伝本のうち、尊経閣文庫本にしか確認できない点には、留意する必要がある。