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以下の文章は、コリイ・ドクトロウの「No, “convenience” isn’t the problem」という記事を翻訳したものである。

Pluralistic

Amazon、Twitter、Facebook、Google、Doordash、Uberを利用したからといって、あなたが怠惰なわけではない。プラットフォーム資本主義が悪化しているのは、あなたの買い物の選択が間違っていたからではない。

これら企業が支配的なシェアを獲得できたのは、資本市場がこれら企業に複数年の赤字経営を許し、競合を駆逐し、市場を独占し、報復を恐れずに価格を吊り上げ、労働者やサプライヤを虐げられるギャンブルとみなしたからだということを忘れてはならない。投資家は独占力、つまり大きすぎて潰せず、大きすぎて罰せず、大きすぎて気にしない企業を追い求めていたのだ。

https://pluralistic.net/2024/04/04/teach-me-how-to-shruggie/#kagi

一握りのスタートアップをビッグテックに変えた戦術は、反トラスト法の下では違法である。大企業が、支配的地位に挑戦する前の小さな企業を買収することは違法だ。支配的な企業同士の合併も違法だ。「略奪的価格設定(不当廉売)」(競争相手の参入を阻止したり、既存の競争相手を追い出したりするために、商品やサービスをコストを下回る価格で販売すること)も違法だ。大企業が、その支配力を利用して、サプライヤに優遇取引を求めることも違法だ。大企業が価格や料金を固定化するために共謀することも違法だ。

しかし、ジミー・カーター政権からドナルド・トランプ政権に至るまでの歴代政権の下で、企業はこうした法律を日常的に破ってきた。彼らは明示的にも暗黙的にも、法が執行されないように共謀し、中小企業を窮地に追い込んできた。もちろん、社会不適合者が小さな企業を立ち上げることもできたが、そんな大馬鹿者が経営する一軒の店舗が、WalmartやAmazonのようにあなたの幸福を脅かす存在になることはない(訳注。嫌なら行かなきゃいいので)。

こうしたことはすべて、賃金の停滞と住宅費、医療費、教育費の高騰を背景に起こった。言い換えれば、小規模企業の経営コストが上昇する一方で(Amazonが主要サプライヤから優遇割引を引き出すと、そサプライヤはより立場の弱い小売業者を負担を押し付けて、その差額を吸収する)、米国人の可処分所得は減少していったのだ。

資本市場が赤字を垂れ流し続ける「将来の独占企業」に資金提供を続ける限り、あなたの隣人は「間違った方法」で買い物をすることを選択し続けるだろう。小規模な地元企業が顧客を奪われるたびに、差額を埋めるために請求しなければならないコストは上昇し、あなたが「正しい方法」で買い物をするのがますます難しくなる。

つまり、企業の反トラスト法違反が黙認されたことで、独占のための舞台が整ったのだ。その責任は、規制当局と、彼らを取り込んだ企業リーダーや金融貴族にあり、間違った選択をした「消費者」にはない。さらに、最大手企業の独占力が増大するにつれ、選択の余地はますます狭まっていった。地元のすべての個人経営レストランがデリバリードライバーを解雇してDoordashに切り替えたら、ドライバーに給料を払う店からデリバリーを注文するという選択肢は存在しなくなる。

独占企業は、資本市場にほぼ無制限にアクセスできるだけでなく、カルテルに参加することで簡単に談合できるという優位性も持っている。CEOが5人なら一つのテーブルに収まるので、5つの大企業は容易に陰謀を企てることができる。

https://pluralistic.net/2023/04/18/cursed-are-the-sausagemakers/#how-the-parties-get-to-yes

対照的に、「消費者」は孤立している。何百万人もの消費者がいても、お互いを知らず、行動指針のコンセンサスを得るのも難しければ、その遵守にも苦労する。「消費者」が変化を起こすためには、協同組合やバイヤーズクラブのような組織を作るか、ボイコットのような協調的なキャンペーンを行わなければならない。そうした戦術にはそれぞれ意味があるものの、独占の力と比べるとあまりに弱い。

幸いなことに、我々は単なる「消費者」ではない。我々は政治的な力を行使できる市民でもある。それは大変な仕事だが、協同組合やボイコットを組織するのも同じだ。違いは、国家権力を振るう執行者に食い下がり、彼らが仕事を始めたならばその後ろで背中を押し、消費者としてできることをはるかに超えた根本的な構造的変化を生み出せるということだ。

https://pluralistic.net/2022/10/18/administrative-competence/#i-know-stuff

我々は「消費者」や「市民」だけではない。我々は「労働者」でもあり、労働者が組合に結集すれば、拡散し断片化した個人の力を一つの強力な存在に集中させ、資本の力を抑えることができる。

https://pluralistic.net/2024/04/10/an-injury-to-one/#is-an-injury-to-all

これらすべては相互に機能する。規制当局がちゃんと仕事をすれば、彼らは組合を結成する労働者を保護する。

https://pluralistic.net/2023/09/06/goons-ginks-and-company-finks/#if-blood-be-the-price-of-your-cursed-wealth

そして強力な労働力は、消費者の選択を支配力の強化につなげる市場操作プランをカルテルに放棄させることができる。

https://pluralistic.net/2023/10/01/how-the-writers-guild-sunk-ais-ship/

そして消費者が競争力のある価格でより良い、より倫理的な地元企業を選択できるようになれば、その選択は変化をもたらす。

https://pluralistic.net/2022/07/10/view-a-sku/

反独占政策はあらゆる形態のピープル・パワーの基盤だ。企業が大きすぎて潰せず、処罰できず、気にしなくなった瞬間に、「財布で投票する」ことは時間の無駄でしかなくなる。

もちろん、地元の小さな食料品店を選んでも、棚に並ぶものはほぼすべて、業界を寡占するProcter and GambleとUnileverの消費財だ。もちろん、P&GやUnileverではなく、あなたが愛する地元のポテトチップス・ブランドを選んだっていい。だが、その地元の製造業者が成功を収めたとしても、P&GかUnileverのいずれかがその企業を買収し、「我々は消費者が選択肢を重視していることを知っているので、この愛されている独立ブランドを買収し、我々のポートフォリオに加えました」と言うプレスリリースを出すことになる。

もし企業に対する市民の力を最大化するために集団行動問題の解決に専念するなら、貴重な時間を賢く使わなければならない。ゼファー・ティーチャウトが『Break ‘Em Up』で書いているように、反Amazonのプラカードに必要なマーカーと厚紙を、Amazonを使わず、2時間かけて個人経営の文房具屋を探し回ったせいで、Amazon倉庫前デモに間に合わなかった、なんてことのないように。

https://pluralistic.net/2020/07/29/break-em-up/#break-em-up

我々の「怠惰」こそが企業に強大な力を与えたのだという論理を受け入れてしまえば、企業が我々の生活を支配するに至った経緯について企業が語る物語、つまり我々は単にその企業を好んでいるだけだという物語を受け入れてしまうことにもなる。検索市場で90%のシェアを持つGoolgeは、まさにそのような論理で自社の独占の理由を説明する。我々がGoogleを選んだのだと。だが、我々は本当に選んだわけではない。Googleは毎年何百億ドルもの費用をかけて、あらゆるウェブサイト、携帯電話、オペレーティングシステムの検索ボックスを買収しているのだ。

https://pluralistic.net/2024/02/21/im-feeling-unlucky/#not-up-to-the-task

消費者の「怠惰」のせいで企業の支配が生まれたという非難は、便利で使いやすいサービスを享受するためには企業にすべてを委ねなければならないという独占企業の主張を受け入れることにもなる。Facebookは、あなたを監視することによって、あなたの大切な人々とのつながりが維持されているのだと主張する。Facebookを利用するユーザ、つまり大切な人と交流したいと願う人を批判するのは、「孤独と孤立を選択しないのであれば、それは独占への加担だ」というメッセージを送ることにほかならない。

Googleの問題は、情報を見つけられるようにしてくれることではない。Facebookの問題は、友達と会話できるようにしてくれることではない。Uberの問題は、腕を振って街角に立たなくても、ある場所から別の場所に連れて行ってくれることではない。Amazonの問題は、様々な商品を簡単に見つけられるようにしてくれることではない。こうした便利さを望むことが間違いだと言うべきではない。なぜなら、a)これらはいずれも良いことであり、b)企業の独占支配力から切り離すことができるからだ。

https://pluralistic.net/2022/11/08/divisibility/#technognosticism

Napster戦争を覚えているだろうか? レコード会社はミュージシャンとファンを騙していた。録音された音楽の80%は販売されておらず、レコード会社は帳簿をごまかして、ミュージシャンが前払いで稼ぐことを事実上不可能にしていた。Napsterはそのすべてを解決したわけではないが(ただし、彼らはライセンスのために、ユーザー1人あたり月額15ドルをレコード会社に提示していた)、Napsterが脅かした旧来のシステムよりもはるかに優れていた点が多々あった。

これに対して、レコード会社は数万の人々――主に子供たち――を訴えた。時に死者や赤ん坊を訴えることもあった。彼らはオンライン匿名性の終焉と、普遍的な監視システムを要求した。彼らは、すべてのオンラインスペースが、ありとあらゆるユーザの投稿をアルゴリズムで監視し、著作権侵害の可能性があるものをすべて削除することを望んだ。

これらは音楽カルテルの問題だった。彼らは音楽の入手可能性を抑制し、ミュージシャンを騙し、無差別な法的テロを展開し、ユビキタスで広範なデジタル監視・管理のシステムを求めたのだ。

https://pluralistic.net/2023/02/02/nonbinary-families/#red-envelopes

では、レコード会社の問題でなかったことは何か? 音楽だ。音楽は良かった。素晴らしかった。

しかし、レコード会社の非道な行為に憤慨した人々の中には、問題は音楽そのものだと決めつける人たちもいた。彼らは、著作権法の改善やミュージシャンの公正な待遇を求めるだけにとどまらず、レコード会社の音楽を聴くのをやめるよう音楽ファンに求めた。どういうわけか、彼らはポピュラー音楽のボイコットを誓うことでしか参加できない大衆運動を組織できると考えたのだ。

それはうまくいかなかった。うまくいくはずもない。人気音楽をボイコットすることでしか参加できない大衆運動は、どうやったって不人気になるに決まってる。戦術が悪いのだ。

テック企業の独占の原因を「怠惰」のせいにすることは、友人に、人生の喜びと快適さを諦めるか、政治を腐敗させず、労働者を騙さず、小さな地元企業を破壊しない公正な経済システムを諦めるか、という二者択一の踏み絵を迫ることになる。これは真実ではない。これは独占企業が自らの不正を正当化するための詭弁に過ぎない。我々がこの嘘を繰り返してしまえば、我々自身が独占企を利する存在になってしまい、労働者の力と政治的な力を築くための闘争に集ってくれたかもしれない人たちを遠ざけることになる。

Pluralistic: No, “convenience” isn’t the problem (12 Apr 2024) – Pluralistic: Daily links from Cory Doctorow

Author: Cory Doctorow / Pluralistic (CC BY 4.0)
Publication Date: April 12, 2024
Translation: heatwave_p2p

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