夏の暑い車内とは、もうさよなら?
猛暑の夏、屋外駐車したクルマの車内は、あっという間に灼熱地獄状態に。ドアや窓を開けてもエアコンを使っても、なかなか車内温度は下がらない。車内が暑すぎて、なかなかクルマに乗り込めない、なんてことはよくある話。車内を温度を下げるための冷却スプレーなども売られているほどだ。
そんな悩ましい猛暑を快適に過ごすため技術が開発された。その技術とは、日産が開発した「自動車用自己放射冷却塗装」。車内の温度を下げる効果がある塗装だ。日産とラディクール社との共同開発になる。
熱を電磁波に置き換える画期的なメタマテリアルを採用
今回開発された塗装は、物体の温度上昇を引き起こす太陽光(近赤外線)を反射するだけでなく、メタマテリアル技術の活用により熱エネルギーを放射するというもの。
なんと、通常塗装と比べると、ルーフパネルで12℃、運転席頭部で5℃の温度低減効果が確認された。
この塗装技術、なかなか画期的だ。太陽光を反射させるタイプの建物用塗装はすでに存在している。ただ、この塗装は塗膜が厚いなど自動車用塗料には向かないという。「自己放射冷却塗装」では、こうした太陽光反射タイプの素材に加え、メタマテリアルと呼ばれる自然界に存在しない材料物性が加わる。
この熱メタマテリアル自己放射冷却材料の特徴は、熱を電磁波に変換して放出すること。そのため、温度が下がるのだ。
ただ、そのまま自動車用塗料にするには、たくさんのハードルがあった。エアスプレーでの塗布や、クリアトップコートとの親和性、日産の品質基準への対応など、様々な条件への対応に取り組みんだ結果、実用化に近付いた。
「自己放射冷却塗装」の効果と耐久性を検証するために日産は、羽田空港において2023年11月から1年間の実証実験を実施している。
その差は歴然!「自己放射冷却塗装」効果
実際に「自己放射冷却塗装」済みと通常塗装の車両を比べてみた。通常層のボンネットやルーフは、熱すぎて触るのも嫌だった。しかし、「自己放射冷却塗装」済み車両では、ちょっと温かい程度。明確にその効果を体験できた。
こうした技術により、とくに夏場のエアコン負担を減らし燃費を向上。電気自動車(BEV)などでは、電費アップに貢献する。結果的に、環境問題や社会課題の解決に役立つ。夏でも暑くないクルマが登場するのも間近だ。