もっと詳しく

BYDシール フロントスタイル

 

 

クーペ風の美しいシルエットをもつシール

 

バッテリーEVの分野でテスラと熾烈なトップ争いを演じているのが中国のBYDだ。2022年夏に日本に参入することを発表し、矢継ぎ早にATTO3とドルフィンを投入した。

そして第3弾として送り出したのが、4ドアセダンのシールである。2023年秋に開催されたジャパンモビリティショーに、参考出品の形で展示されていたから見た人も多いだろう。ちなみに車名の「SEAL」は、ドルフィン(イルカ)と同じ海獣で、アザラシのことだ。顔立ちなどからも海獣らしさが感じられる。

BYDシールは、Dセグメントの4ドアセダンだが、伸びやかなクーペ風のシルエットだ。グリルレスフェイスや寝かせたCピラーなどにより躍動感あふれ、遠くからでも目立つ。

BYDシールのボディサイズは全長4800mm、全幅1875㎜、全高1460㎜で、ホイールベースは2920㎜と、かなり長い。ホイールベースを除けば、レクサスISやスカイラインに近い大きさである。海外のセダンでは、メルセデスベンツのCクラスやBMW3シリーズが近いサイズだ。

BYDシール リヤスタイル

BYDシール ホイール

BYDシール リヤアップ

 

 

システム出力529㎰! スポーツカー顔負けの速さを誇るBEV

 

シールのグレードは、シンプルで1グレードのみ。ワンモーター、リア駆動の2WDモデルと前後にモーターを配した4WD(AWD)の設定だ。

リアを駆動するモーターの最高出力は312ps(230kW)で、最大トルクは360N・m(36.7kg-m)を発生する。AWDに加わるフロント駆動用のモーターは、217ps(160kW)/310N・m(31.6kg-m)のスペックだ。AWD車のシステム合計出力は529ps(390kW)/670N・m(68.3kg-m)と、かなりパワフルである。停止から100km/h加速は、2WDが5.9秒、AWDは3.8秒と俊足だ。

BYDシール インパネ

BYDシール メーター

 

 

ベンチレーション付きレーザーシートを装備した快適仕様も

 

シールを最初に試乗したが箱根。2回目のドライブでは、長野県の白馬村まで足を伸ばし、電費も測ってみた。

まずは、リア駆動のシール2WDモデルのステアリングを握る。BYDのフラッグシップだけに、インテリアは上質な仕立てだった。ナッパレザーのフロントシートは大ぶりで、パワー調整機構だけでなくヒーター機能とベンチレーション機能も内蔵している。だから、夏場の暑い日でも快適だ。

ウインドスクリーンは傾斜がきついが、水平基調のインパネからの見晴らしはいい。ドライバーの前に置かれた10.25インチのメーターは見やすいが、ヘッドアップディスプレイがあるため、ロングドライブではこちらを優先してしまう。

起動はセンターコンソールのプッシュスイッチで行うが、シフトレバーの真後ろにあるため、最初は戸惑う。メーターから得られる情報は豊富だ。だが、ステアリングスイッチで情報を切り替えるのは煩わしいので、一度に見られる情報を増やした方がドライバーには親切だと思う。

BYDシール フロントシート

BYDシール リヤシート

 

 

電費アップが可能になるコースティングモードがないのが物足りない?

 

まずは、走行モードをスタンダードモードにしてスタートする。車両重量が2100kgと、重いこともあるが、EVにありがちな唐突な加速感ではない。自然な感じでスタートし、気持ちよくスピードを乗せていく。もちろん、モーターならではの滑らかさに加え、静粛性も文句なしだった。100km/hからでも力強い加速を披露し、風切り音も上手に封じている。

エコモードも使ってみたが、平坦路を流す走りなら不満を抱くことはないだろう。そしてスポーツモードに入れると、メーター画面が赤の縁取りに変わり、応答レスポンスも格段に鋭くなった。

次はシールAWDモデルである。車両重量は100kgほど増えているが、エコモードでも余裕ある走りを楽しむことができた。アクセルを踏み込むとリニアにパワーとトルクが湧き上がり、スピードを上げていく。街中を中心とした低速走行や渋滞でもドライバビリティは良好だ。

スタンダードモードは、2WDよりパンチがあり、積極的に加速しようとする。スポーツモードは、シートバックに体を押さえつけられるほど、刺激的な加速だ。パワフルなクルマに乗り慣れていないと、焦るほどのパワフルさだ。

エンジンブレーキのようにアクセルを緩めて行う回生ブレーキは、2段階に調節できる。だが、モニター内で強弱を切り替える必要があるし、回生もそれほど強力ではない。もう少しきめ細かく回生を引き出せるように、パドルシフトのスイッチがほしいと感じた。また、高速クルージングで電費を稼げる、惰性で空走させるコースティングモードがないことも物足りなく感じたことのひとつ。

BYDシール センターモニター

BYDシール シフトノブ

 

 

優れたバッテリーマネジメント

 

とはいえ、バッテリー容量は82,56kWhで、一充電走行可能距離は2WDが640km、AWDは575kmだ。良好な電費を出しやすいのは2WDだが、運転の仕方で電費は大きく変わる。

中央高速道路の八ヶ岳周辺の登りでは、2WDモデルでも4km/kWh前後まで電費が落ち込んだ。だが、平坦路ではエアコンをバンバン効かせても6km/kWh台に乗せることができた。山岳路をロングドライブしても不安と感じることはない。

サービスエリアなどで急速充電を行ったが、高速走行の直後でも熱だれしないで充電できたのは驚きだ。テスラの高い冷却性能は定評があるところだが、シールも充電のマネージメント能力は高い。何回か90kWの充電器を使ったが、最初から速やかに入っていったし、バッテリー保護のための落ち込みも予想以上に小さかった。

BYDシール ボンネット

BYDシール トランク

BYDシール トランク

 

 

軽快な2WD、快適な4WD

 

シールのサスペンションは、フロントがダブルウイッシュボーン、リアはマルチリンクである。AWDモデルは可変ダンパーを奢った。どちらもハンドリングは素直で、ステアリングを切った分だけ狙った方向に曲がってくれる。セルtoボディと名付けられたボディ構造を採用しているが、バッテリーセルを直接ボディに組み込み、構造材としたことによって高い剛性を実現した。

ハンドリングと乗り心地の妥協点が高いと感じられたのは2WDモデルだ。軽やか、身軽と感じるのは2WDだが、グリップ感と安定感が一歩上を行くのはAWDである。可変ダンパーは路面の凹凸を上手にいなし、後席に座っても快適だった。リアを強めの駆動力配分設定とし、ロールを抑え込んでいるから、豪快な走りを安全に楽しむことができる。

そして、真夏のドライブでありがたみを実感できたのがパノラミックガラスルーフだ。シェードがないため、最初は心配だった。が、紫外線を99%もカットし、可視光線の透過率も低く抑えているからキャビンが暑くならない。これは驚きだった。

快適装備だけでなく、シールは先進安全装備もてんこ盛りだ。数少ないウイークポイントは、強引に引き戻そうとする車線逸脱防止機能。だだ、これは遠くない時期に改善されるとのことである。

試乗前はAWDモデルに注目していたが、試乗後には2WDモデルを積極的に進めたい、と思うようになった。最初の限定車なら495万円のプライスタグが付いている。補助金を使えば、もっと安く買えるから満足度はすこぶる高いはずだ。BYDシールは、テスラにとって手強いライバルになるだけでなく日本のBEVをも脅かす存在になるだろう。手強いライバルが出現した。

<レポート:片岡英明

 

BYDシール価格

・シール 5,280,000円

・シールAWD 6,050,000円

BYD ドルフィン試乗記

BYD ATTO 3試乗記

ヒョンデ アイオニック 5 N(IONIQ 5 N)試乗記

日産アリアNISMO(ニスモ)試乗記・評価

日産アリアB6 VSトヨタbZ4X 徹底比較評価

日産アリアB6 VS マツダMX-30 EV MODEL徹底比較評価

BMW iX1試乗記

BMWのBEV特集

SUV動画・新車情報・試乗評価一覧

電気自動車新車情報・試乗評価一覧

BYD シール電費、航続距離、ボディサイズなどスペック

代表グレード:シール 2WD

全長×全幅×全高 (mm) 4,800×1,875×1,460

ホイールベース (mm) 2,920

乗車定員 (名) 5

車両重量 (kg) 2100

タイヤサイズ 235/45 R19

最小回転半径 (m) 5.9

サスペンション (フロント/リヤ) ダブルウィッシュボーン/マルチリンク

駆動方式 2WD(後輪駆動)

リヤモーター最高出力 (kW/㎰) 230/312

リヤモーター最大トルク (N・m) 360

駆動用バッテリー種類 リン酸鉄リチウムイオン電池

総電力量(kWh) 82.56

一充電走行距離(km) 640

交流電力量消費率 (WLTCモード) (Wh/km)  148

電費(一充電走行距離÷総電力量)(㎞/kWh) 7.75