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以下の文章は、電子フロンティア財団(EFF)の「Podcast Episode: Fighting Enshittification」という記事を翻訳したものである。本稿はEFFのポッドキャストシリーズ「How to Fix the Internet」のエピソードの書き起こし記事である。

Electronic Frontier Foundation

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  • なぜ「知的所有権」という名称は誤りであるのか、社会に必要な保護を排除するためにいかにして法律が濫用されてきたか
  • テクノロジー業界のロビー活動における団結が、いかにして規制を骨抜きにしていったのか
  • 最近の反トラスト法に基づく措置によって、巨大企業にユーザのための行動を迫るかすかな希望のをもたらす理由
  • なぜテックワーカーの労働者の権利が良きインターネットのための戦いに重要なのか
  • 立法・法的な敗北が、未来の変化のためのきっかけになる可能性について

は、受賞歴のあるSF作家、活動家、ジャーナリスト、ブロガーで、EFFの特別顧問である。彼はPluralisticの編集者であり、「The Bezzle」(2024年)、「The Lost Cause」(2023年)、「Attack Surface」(2020年)、「Walkaway」(2017年)などの小説の著者である。「Homeland」(2013年)や「Little Brother」(2008年)などのヤングアダルト小説、「The Internet Con: How to Seize the Means of Computation」(2023年)や「How to Destroy Surveillance Capitalism」(2021年)などのノンフィクション作品も執筆している。彼はかつてEFFの欧州ディレクターで、英国のOpen Rights Groupの共同創設者である。カナダ・トロント生まれで、現在はロサンゼルス在住。

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Transcript


つまり、相互運用性というのは、洗濯機を売った人から服を買う必要がないということなんだよ。洗濯機はどんな洗剤でも使える。食器洗い機だってどんな食器でも入れられる。誰のガソリンや電気だろうと車に入れられるし、どの航空会社にも荷物を持ち込める。

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彼はコリイ・ドクトロウ。相互運用性が私たちの生活のあらゆる場面に恩恵をもたらしてくれていることを語っています。

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私はジェイソン・ケリー、EFFのアクティビズム・ディレクターです。この番組は私たちのポッドキャストシリーズ「How to Fix the Internet(インターネットをなおすには)」。


私たちEFFは、オンラインで起こりうる問題を警告し、そして実際に問題が起きればその解決に全力を尽くしています。ですが、この番組では、物事が正しく進み始めたらどんな世界になるかを想像しようとしています。


今日のゲストはコリイ・ドクトロウ。彼はデジタル世界に関する世界屈指の公共思想家で、作家、アクティビストでもあります。彼はフィクション、ノンフィクションを執筆し、1ページあたりに詰め込まれるアイデアの量は誰にも負けないほど。


幸運なことに、コリイは20年以上にわたってEFFの一員であり、私の最も親しい友人の一人です。このポッドキャストの第1シーズンにも出演してくれました。たしか最初のゲストだったと思うけど、また話を聞きたくなって。彼と話すのがとても楽しいというのもありますが、彼がプラットフォームの独占問題に対処するために提唱してきた中心的なアイデア、つまり相互運用性(あるいは競争的互換性と呼ぶアイデア)が、米国・欧州の政策分野で実際に推し進められるようになってきているからです。


古き良きインターネットは、高度な技術的自己決定に特徴づけられる。つまり、使用するデジタルツールがどのように機能するかを自分で決定する権利だ。

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素晴らしい。つまりは「未来はもうここに来ている、ただ、その未来はまだ公平に分配されていない」。その未来を公平に分配したいし、誰もがもっと簡単に使えるようにしたい、と。


そう。古き良きインターネットの問題は、熟練した技術実践者が企業の理不尽に耐えなければならなかったことじゃなかった。


そして、技術に疎い私たちにはもっと手の届かないものになる、ということですね。エンドユーザの側は、世界がもっと多くの選択肢、自分を守るためにできることや助けを求められるより良い選択肢に溢れることを求めている。そして、ハッカーやイノベーターの側は、良いアイデアを簡単に実現し、実際に機能させ、それをたくさんのひとに見つけてほしいと願っている。


それ以上だと思う。そこには、インセンティブ効果も働くから。市場にまかせておけば社会の資源がうまく分配されて、すべての問題が解決されるとまでは思っていない。でも、市場の力を心底信じている人が言うように、とにかくインセンティブはうまく機能する。

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現在のデジタル世界の状況について、キミが去年生み出した造語「メタクソ化」に向かって議論が進んでるようですね。キミのマクルーハンの講演でも、今の話と類似した論点がたくさん出てきた。この言葉について聞いてもいいですか。端的に、どういう意味なのか、そして、なぜ米国方言協会が今年の言葉に選んだのでしょう?


そうだね。最上位の定義としては、テクノロジーにはユニークかつ特徴的な技術特性があり、デジタルがもつ柔軟性と流動性によって、他セクターの企業とは一線を画した方法で、企業がステークホルダーに損害を与えることを可能にする、ということ。

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そう、それがまさに敵対的相互運用性ということですね。この言葉はEFFの初期のスタッフ・テクノロジストだったセス・シェーンの造語だったと思うんですが、冒頭に話していたHPプリンタの例のように、あなたが深く掘り下げ、発展させてきたアイデアでもありますね。


敵対的相互運用性は、デジタルツールが登場してからというもの、私たちの技術的なストーリーの中に存在し続けてきた。これまで話してきたように、デジタルツールには柔軟性があるからね。私たちが作れる唯一のデジタルコンピュータは、チューリング完全フォン・ノイマン型マシンで、つまり有効なすべてのプログラムを実行できる。つまり、メーカーがユーザが不利になる機能を追加したり、顧客に対して権限の濫用をしようものなら、誰かがその機能をアンロックできる。

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そうですね。DMCAの例外規定を通じてジェイルブレイクそのものを解放することはできたけど、そのことが多くの人々の助けになることはなかった。私たちは法律の一部に例外規定を設けさせることはできたけど、それ以外の条文がジェイルブレイクを妨げたままで、事実上ほとんどの人が例外規定の恩恵を受けられずにいます。


釈迦に説法だと思うけど、まさに例外処理の欠陥というやつでね。ちょうどフィナンシャル・タイムズのファクトチェッカーと、そのやり取りをしたばかりだよ。彼は私のメタクソ化のスピーチを記事にしてるんだけど、「スマートフォンのジェイルブレイクは違法化されていると言ってますけど、ジェイルブレイクは見直しプロセスで合法化されたんじゃないんですか」と言ってきた。そう、確かにそのプロセスで自分の電話のジェイルブレイクは合法化された。でも、ジェイルブレイクのツールを提供したり、ツールの使い方を教えたり、ツールについて誰かと議論することが合法化されたわけじゃない。ようは、丸太からジェイルブレイクツールをこっそり作り出せるならいいですよ、と言ってるわけ。

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本当におかしなことですよね。自分でやるのはいいけど、それを手助けしたら違法になるというのは。どう考えてもおかしい。もちろん、デジタルミレニアム著作権法が1998年に可決されて以降、あるいはその議論が始まった1995年からと言ってもいいかもしれないけど、EFFは一貫してDMCAと戦い続けてきました。そうして、少しずつ法律を変え、あなたはそのことをたくさん書いてきた。この戦いは長期戦で、長く戦い続けるには、わずかな勝利でもその勝利を広く知らしめなければならない。その意味では、私たちが小さな勝利を誇張したことで、全体的なストーリーを誤解させてしまっているのかもしれないですね。ストーリー全体としては、私たちにはまだやるべきことが山ほどある。


そうだね。これを理解するには、DMCAだけじゃなく、いわゆるIP法(知的財産法)全般を考えるべきだよね。そのIP法がジェイの言う「ビジネスモデル侮辱罪」を構成しているわけだから。我々は、昔からIP(知的財産権)という言葉は使うべきではないという議論をしてきた。実際には財産ではないし、一連の政策を明確に表現するものでもない。商標、特許、著作権の話なのか、それとも放送権やデータベース権などを含めた話なのかが曖昧なんだ。でもビジネスの文脈では、IPは非常に具体的な意味を持っている。

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インターネットを修正する上で、一番のフラストレーションがまさにそれですね。一つの問題に取り組んで、なんとかその障害を乗り越えたと思ったら、また次の障害が立ちはだかる。ここで言及されていないものとしては、契約法がありますよね。利用規約やクリックラップライセンス契約がイノベーションや相互運用性を妨げている。なんだかゲームみたい。勇敢なプログラマーがあらゆる法的障害を乗り越えて、最後に勝利を収め、デバイスやツールのコントロール権を私たちに取り戻せるのか?みたいな。


そうだね。現在の反トラスト法訴訟がエキサイティングなのは、多くの企業がこれまで正当性を認めず、無視しようとしてきた義務を直視せざるを得なくなるからだ。監督当局が反トラスト法を正しく執行してくれればという前提ではあるけど、「ねぇ、君たちは自分たちのこれからの行動を制約するような和解を結ばなきゃならなくなってるんだよ? ある部門を切り離すなり、ある種の相互運用性を認めなきゃならないんだ」と交渉する余地が生まれている。

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そうそう。EFFに参加して間もない頃、AdobeがFBIにディミトリ・スクリャロフをDEFCONで逮捕させましたよね。Adobeの電子書籍を他のフォーマットやプラットフォームにコピー、ムーブできるソフトウェアを開発したためでした。EFFの幹部数人がAdobeのオフィスに向かい、Adobe幹部に取り下げるよう求めました(訳注:参考記事)。

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ここで少し休憩を挟んで、スポンサーに感謝を伝えましょう。「How to Fix the Internet」は、アルフレッド・P・スローン財団の科学技術の一般理解促進プログラムの支援を受けています。ますます技術化する世界への理解を深めることで、生活を豊かにし、科学者、エンジニア、数学者の複雑な人間性を描き出しています。

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ある時期、EFFから逃げ出そうとしたことがある。「もうダメだ、執筆とアクティビズムは両立できない。一つに絞らなきゃな」と思った。それで数年間は執筆だけに専念したんだけど、世界はどんどん間違った方に進んでいって、自分はそれを解決しようとすることから距離を置いてしまっていることに耐えられなくなった。それで思ったんだ。無力さと絶望を感じながら傍観するくらいなら、知的にも感情的にも、過労のほうが遥かにマシだ、と。

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うん、そのとおりだ。このポッドキャストのゲストの多くがブルーリボンキャンペーンについて語ってくれることを、とても嬉しく思っています。この戦いは私たちの勝利に終わったけど、それは何年も前から、おそらく意図せずに、今日まで続く連帯を築き上げてきたからこその勝利だったんだと思う。勝利と敗北を繰り返しながら基盤を築いていけば、いつかもっと大きな成果に到達できると信じられるのは、とても素晴らしいことだ。


より良い世界を構築しようとすること、つまり良き人間であろうとすることにも楽しさがあるんでしょうね。力強い何かがそこにはあると思う。戦いは長く、厳しい。私は常々「良き人間たちはより良いパーティを開く」と言ってきた。ある面では、怒りをたぎらせ、目を真っ赤にして、悪いことを食い止めるために戦わなければならない。でも別の面では、共に戦う仲間は一緒にいて楽しい人たちなんですよね。だから、アクティビストにはその両方の面があると伝えていきたい。両方とも大切なんですよね。楽しさ――勝ったときの喜び、時に負けたときのブラックユーモア――は、怒りと同じくらい重要。怒りだけで長期戦を戦い抜くことはできませんから。


Frameworkという会社のラップトップを持っているんだけど、これは本当に素晴らしいんだ。ユーザが自分で修理できるラップトップで、ドライバーも付いてきて、私のような不器用でも自分で修理できるんだ。それと、このラップトップをしょっちゅう落としちゃうもんだから、底のネジが緩んできた。それで連絡したら、「これは設計時に想定されていなかった問題ですね。無料で新しい交換部品を送付しますので、不良品を返送してください。分析して今後の製品に活かしたいと思います」と言ってきた。

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キャンペーンをご存じない方のために説明すると、実はコロナ禍の初期に、プライベートエクイティが.orgドメインの管理団体を買収する動きがあったんです。もちろんEFF.orgにも影響しますが、他のあらゆる非営利団体にも影響を及ぼす大問題でした。私たちは非営利団体をはじめとする大規模な連合を結成し、この取引を阻止した。それがsave.orgでした。コリイが言ったように、私たちの親愛なる友人エリオットは当時アクティビズムディレクターで、save.orgが彼の最後のキャンペーンでした。そして、私たちは勝利し、.orgを救った。その戦いは今も続いています。.orgの世界はすべて完璧とは言えないけれど、私たちはそれを食い止めた。ICANN会合の前には、とてもファンキーで、ナードな抗議活動にたくさんの人たちが集まりましたね。


トップレベルドメインは相変わらずヒドい有り様だね。ようするに、状況は何も変わっちゃいない。そのキャンペーンの素晴らしかったのは、勝利への道筋がなかったことだった。法的な根拠がなかった。その組織は少なくとも表面的には世論や利害関係者の意見から完全に切り離された、独立したバブルの中で運営されていて、やりたい放題だったんだ。だから我々はできることは何だって試してみた。あらゆる戦略を試みた結果、累積的に効果を発揮しだして、ついには奇妙なことが起こりだした。例えば、当時カリフォルニア州司法長官だったハビエル・ベセラが「まあ、キミたちはカリフォルニアの非営利団体だ。これについて調べてみよう」と言い出した。

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素晴らしい言葉で締めくくることができました。コリイ、時間を割いて私たちと話してくれてありがとう。私たちはこれからもその道を歩み続け、より良いインターネットを推進していくための小さな可能性や突破口を探し続けていきます。私たちはみんな、それだけの価値があるのだから。


ありがとう、コリイ。キミと話せて本当に楽しかった。


どういたしまして。


私は他の人よりもコリイと話す機会が多いんだけど、それでも彼と話せるといつも嬉しく思う。シンディ、今日の感想を聞かせてもらえますか?


専門的になりがちな敵対的相互運用性や競争的互換性のような概念を、過去に起こった様々な出来事を具体的に挙げて説明してくれたのが良かったですね。しかも遠い過去の話ではなく、最近の出来事を挙げて。つまり、より良い未来を構築することは、すでに別の状況で使われてきたツールを、プラットフォームのメタクソ化の世界に適用すること。抽象的で曖昧な何かではなくて、具体的で実現可能なものとしてすでに存在している。「私たちが火星に行けるようになったら、問題はすべて解決する」なんてフワッとしたものじゃない。


彼は過去の成功から学べることを伝えるのが本当にうまいですよね。この分野は、失敗したことから学ぼうとしがちだから、本当に珍しいタイプですよね。私は彼がどうしてアクティビストとして戻ってきたのかを聞けたのが良かった。執筆とアクティビズムの両立は大変すぎるから、どちらかに絞らないといけないと彼は考えていた。でも実際には、起こっていることが気になりすぎて、どちらかだけに絞ることなんてできなかった。彼が「目が赤くなる」と表現していたのを聞いて、ゲイ・ゴードン=バーンと修理する権利について話していた時のことを思い出しました。彼女は引退していましたが、何度も引き戻されて、ついに修理する権利のために全力を尽くすことを決意した。映画『ゴッドファーザー』に「引き戻される」という有名なセリフがありますが、コリイのような人たちはまさにそうなんでしょうね。


そうですね、私もゲイの話を思い出しました。もちろん、私はその反対側にいました。コリイを何度も呼び戻す側の一人だったんです。


つまり、あなたが彼を引き戻した。


いえ、彼自身が戻ってきたんだと思います。私はただそこにいただけで。でも、誰かの情熱が高まっていくのを見て、その人が戦いに戻らざるを得なくなるのを見るのは面白いですね。ゲイも同じような軌跡を語っていました。時には、何かがあまりにも気になって、「よし、この戦いに加わって、物事を良くしなければ」と決心するんです。


これを聴いている人たちも同じような気持ちになってくれることを願っています。私たちのサポーターの多くはすでにそうなってると思いますけど。

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そして、シンディ・コーンでした。

Podcast Episode: Fighting Enshittification | Electronic Frontier Foundation

Author: Josh Richman / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: July 2, 2024
Translation: heatwave_p2p

The post first appeared on p2ptk[.]org.