みんかぶプレミアム特集「クライシス円安」第2回は経済学者の竹中平蔵氏が相場と日本経済の見通しを語る。「このままでは日本人はどんどん貧乏になる」と指摘するが、それを防ぐために必要だと語るのが「移民法の設立だ」。移民を受け入れれば日本人の職は奪われるのでは、という疑問には「そんなことはなかなか起きない」とも解説。一体どうすれば最悪の事態から免れることができるのかーー。
日本全体が貧乏になっていくことになります
日本円が一時1ドル160円を突破するなど、円安が続いています。しかし、為替レートとは必ずオーバーシュートするものです。高い時は高くなりすぎますし、安い時は安くなりすぎます。短期的にみれば今のドル円レートは安くなりすぎています。 1973年を基準とした購買力平価(消費者物価)は2024年2月の時点で108.2円です。購買力平価とは、国が異なっても、同じ製品の価格は一つであるという「一物一価の法則」から成り立つ交換レートです。ドル円レートが購買力平価から大きく離れている時は、いずれ購買力平価の水準に向かって動くだろうとされています。今は明らかに円安に振れ過ぎているので、これは引き戻されるだろうとみています。ですが、それでもあくでも調整的な意味合いで、長期的にみれば日本という国が変わらない限り円の価値は下がり続けます。それは後述しますが、日本全体が貧乏になっていくことになります。 つまるところ、この為替レートとは日本経済にとって何を意味するのでしょうか。円安は円が相対的に弱いという見方をされますが、本来であれば物価調整をして、かつドルだけではなくユーロや元など他の通貨も含めた実質実効為替レートで見るべきでしょう。
実質実効為替レートだと30年でも6割減ったという衝撃的事実
そうすると2020年を100とした実質実効為替レート指数は、1994年4月に175.02だったのが、2024年4月には70.94にまで落ち込みました。30年で6割も下がっているのです。これはドル円レートで160円突破したとかそういう話以前の大問題です。そもそも、もともと円は360円だったのですから。この実質実効為替レートで6割減ったとことは、われわれ日本人は重く受け止めなくてはなりません。 為替に影響するものは主に3つあります。まずは短期的には金利差です。ふたつの通貨に金利差が生じると、金利が高い方の通貨が買われる傾向があります。今のオーバーシュートはまさしくこれが強く影響しています。米国が高金利状態を維持する方針なのに対して、日銀はマイナス金利政策を解除したものの未だに低金利だからです。
社員をレイオフできる国にするべき
ただこれだけでは、実質実効為替レートの極端な低迷の説明にはなりません。そこであと二つの為替影響要因がでてきます。中期的には経常収支の動向、長期的にはファンダメンタルです。経常収支とは通貨の外に対する需要と供給を表します。ファンダメンタルとは基本的な通貨や国に対する信頼感です。 日本は失われた30年でファンダメンタルを強くするような政策を十分してきませんでした。例えば、私は繰り返し問題点としてあげていますが、日本には雇用の流動性がありません。 解雇に対して厳しい規制がある日本の社会では終身雇用、年功序列制度に固執しており、雇用の流動性がありません。生産性の低い事業があっても、判例によってそこにいる人たちをなかなか解雇できないために、業績の悪い企業も、ずるずると古いビジネスモデルのまま継続しています。そんな日本の企業では、場合によっては何もしない、”効率的に働かない社員” が発生しています。考え方によっては、働かなくても給料がもらえる社会はユートピアなのかもしれませんが、そんな状態がいつまでも続くわけがありません。だからこそ日本は、必要があれば企業が十分な補償をしたうえで、社員をレイオフできる国にするべきなのではないでしょうか。
“脱法的”な労働搾取が一部では生じている
もしくは移民法を設立すれば世界から見え方も変わるでしょう。ジョー・バイデン米大統領から「排外的である」と批判されるほど、移民に対して根強く反対意見が多いです。これだけ労働者不足を各企業が悩みながら、政府としてやっていることは枠をちょっと広げるだけです。 依然として研修という形で安い労働力を使っているわけですが、これはフェイクの労働力です。韓国やドイツにも存在する「移民法」の創設から目を背けている日本だからこそ可能な、ある種”脱法的”な労働搾取が一部では生じています。 本来であれば、移民法をつくってパーマネントな移民とテンポラリーな移民を区別して管理をするべきでしょう。そしてパーマネントの移民者には日本語力や日本文化に対する一定の理解を求める、と。一方でテンポラリーな移民者はいわば「出稼ぎ」ですので、極めて短期のビザを発行し、問題を起こした人にはどんどん帰国してもらう、と。
なぜ外国人はあなたの職を奪わないのか
日本では研修という目的で滞在させそれを延長しているので、テンポラリーな移民者に長い滞在期間を与えているようなところもあります。 もし日本で移民法をつくれば日本経済にとって大きなインパクトになります。今、日本ではデジタル人材が不足していますが、大学改革をやらず、デジタル人材をつくるような教育を20年、30年もやってこなったのです。だからこそ、外国人にきてもらわないと困るような事態に陥っています。 移民を受け入れれば、外国人が日本人から職を奪いということにならないのか、という疑問もよく聞かれますが、そんなことはあり得ません。なぜならそもそもデジタル人材などが今、日本人だけでは足りていないのですから。
竹中 平蔵
引用元 https://news.yahoo.co.jp/articles/a6914076b916a98d1eb716bd8da5b95ae1cae732?page=1
みんなのコメント
- 昔カンボジア難民を受け入れて、大変な目にあってますから 移民を受け入れる必要はありません 移民政策は一歩間違えてば、その国の文化や風習を壊します 悪しき風習は壊しても良いですが、良い風習や文化が無くなることを吾輩は善しとしません ましてや移民政策が成功している国が無いことを踏まえれば、移民を受け入れる理由はないでしょう
- 移民ではなく、Aiやロボットなどの研究開発に投資して、積極的に活用すべきだと思います。 単純に移民の方を入れても労働生産性は上がらず、いつまでも社会は変わらない。 本当に人が必要なところには人を、ロボットが対応できるところにはロボットを、それができれば日本が超高齢化社会のピンチをチャンスに変えられるかもしれない。
- 雇用の流動性については賛成だがレイオフという経営側に立った言い方には賛同できない。 まずは中途採用で就職出来るようなしすてむにすべき。日本企業がそれをやらないのなら年度の新規雇用者の内の半分は中途採用者にする様に大企業などには国が規制を掛けるべき。その上で解雇規制を撤廃すべきだと思う。
- 仮に簡単に解雇しやすい状態にしたとしても雇ってくれる保証はないし、下手すれば「働くぐらいなら犯罪犯して刑務所に入ろうっと。だって刑務所なら仕事(刑務作業)もご飯も住居もあるからな」って感じで犯罪者が増えて治安が悪くなる可能性もあるからな。それに治安が悪くならなかったとしても、雇えるようにするためにスキルアップを行い、恋愛とか結婚に労力を割かないようになりますます少子化が増えるかもな。結局は、解雇しやすい状態にしてもデメリットが多すぎるってことだ。
- 私個人的な意見ですが、移民は絶対反対です。日本には合いません。不足する労働力は機械化やAI、地方ではコンパクトシティー化などで乗り切るしかありません。 社員をレイオフも反対です。ますます不安定な気分になりさらなる少子化に拍車をかけそうです。治安も悪化する懸念があり、日本の良い所を失う可能性大なのでやらない方が良いと思います。
- 移民を受け入れて経済が上向いた国はありません。安い労働力を入れることは全体の賃金を下げることです。労働者数が少ない今こそ生産性を上げる投資が必要なのではないですか? 生産性が~ とか年中言ってる竹中さんらしくない てかっ、自分の為につかいわけてるのかな? 高度成長期でさえ、日本の人口増加率は1%程度、それを生産性を上げる投資で自動化やら頑張った。 今更日本の産業を労働集約型に戻す意味ありますか? 移民は日本の生産性を下げる政策ですな
- 発展途上国の方々を想定して,安い労働力だと考えているとしたら大間違い。それは最初の一瞬で,いつまでも単純労働者ではありません。その方たちは若い日本人労働者をあっという間に実力で追い抜いてしまいます。いまや外国人管理職に使われる薄給の日本人という構図がいろいろあると思います。 まずは次世代を数的にも,そして実力でも上げていくのが日本が生きのこる道だと思います。
- 竹中氏がたびたび論じている考え方だけど日本国外(たとえばアメリカ)では移民も従業員のレイオフも雇用の流動性も実現していると思うので、ご自身が米国で経営者として成功できるか、結果を出してきてもらいたい。日本で竹中理論の実験に巻き込まれるのは嫌なの。
- 確かに日本の人手不足はあるだろうが、移民ばかりに頼り続けては日本は日本でいられなくなるのではないだろうか。 実際に移民による治安の悪化や制度をしっかり理解しない者による違反行為も見られてくるだろうし、実際にそうして移民による被害は出てきているわけだ。クルド人が、古来から日本の地に住む日本人の居場所を荒らす騒動も見られるし、むしろ移民の受け入れや難民申請の慎重さを強化することの方が急務だと感じさせられる。
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