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「特定の属性の住民を排除する言葉が広がり、脅威を感じている。近所では外で遊ぶ一部の子どもたちを見かけなくなり、仕事以外で外出を控えるようになった友人もいる。いじめに遭い、学校で孤立している子どもたちの話も聞く。一部の住民の生活に大きな不安や支障が出ている状況だ」  4月3日、県庁での記者会見で窮状を訴えたのは川口市民で同会の世話人の一人、折茂あいさんだ。

 県内のクルド人ヘイトは昨年夏ごろにSNSで火がついた。そこに日の丸街宣倶楽部や日本第一党といったレイシストグループが便乗し、川口駅や蕨駅の周辺でデモと街宣を繰り返すようになった。  川口市は外国籍住民が約4万人と、全国で最も多い市区町村の一つ。映画『キューポラのある街』で描かれたように、在日コリアンをはじめとする外国人労働者が、街の発展を下支えしてきた。「STOP HATE 川口・蕨」のメンバーでもある折茂さんは次のように語った。 「多様なバックグラウンドを持つ人々が生活している川口を誇りに思っている。認識の違いから生じるトラブルはどの社会でも起こるものだ。私たち住民や行政、警察など多くの人々が解決策を模索し、住みよいまちづくりがなされてきた。こんないい地域に外から住民を分断する言葉や行為が持ち込まれ、不安が募っている」  地域で共に暮らすクルド人が差別されている。それはマイノリティを含めた「私たち」への攻撃を意味する。行政を筆頭に地域ぐるみで差別主義者と対峙すべきであり、その旗印が差別禁止・へイト規制条例だ、ということになる。  同じく世話人でさいたま市民の中島麻由子さんも「クルドの問題ではなく、元々日本にあった排外主義の問題だ。市民社会がヘイトスピーチに対抗する力を持ってこなかったことや、行政が対応してこなかったことに問題がある」と強調した。 川崎では条例で抑止効果  在日コリアンを標的にしたヘイトデモが繰り返された川崎市では2019年、ヘイトスピーチに刑事罰を科す条例が全国に先駆けて成立した。ヘイト団体の活動が下火になる抑止効果が証明されており、会では先行自治体を参考にしながら県や川口市、蕨市に条例の制定を働きかけていくという。  折しも大野元裕・埼玉県知事は3月28日の定例記者会見で見解を問われ「ヘイトスピーチは地域社会から徹底して排除されなければならない」と述べた。そう言うのであれば防ぐ手だてとなる規制条例をつくらなければ辻褄が合わない。中島さんは「知事は『日本一暮らしやすい埼玉』をスローガンに掲げるが、ヘイトがあって暮らしやすくない人が現にいる。外国人を含むマイノリティがこぼれ落ちていいのか」と念を押す。  だが県内のヘイトデモや差別街宣の現場では、警備に当たる警察官がレイシストに抗議する市民を「ザコども」と侮辱したり、差別街宣の後片付けを手伝ったりする姿が確認されている。「差別に肩入れするような県警の態度がヘイト団体の活動を招いている」と中島さんは言う。規範の欠如がこうした振る舞いを許しているともいえ、ヘイトスピーチを犯罪と定めたうえで行政として差別に厳しい姿勢を示す罰則条例の必要性が、ここにも表れている。 「川口の未来を創る市民の会」の武内暁さんは会見で「必要なのは治安強化ではなく共生。ヘイトスピーチは表現の自由ではなく、外国人と一緒に地域を作っていくために必要な禁止条例の制定を目指していく」と力を込めて語った。

石橋学・『神奈川新聞』記者



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