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日産車雪道テスト

 

高度な姿勢挙動制御で安心・安全な「e-4ORCE」

 

「技術の日産」がドライバーの操作(ハンドルやブレーキなど)、車両状態(ヨー、ロール、ピッチング)をセンシング、そのデータを解析して姿勢挙動制御に用いた「e-4ORCE」モデルを積極的にアピールしている。

このe-4ORCEは、車両挙動センシングとデータの統合制御により瞬時に状況判断を行い、ブレーキの制動力や、BEV(電気自動車)と組み合わせることで前後モーターの駆動力配分を細かくコントロール、クルマを安定方向に導いてくれるシステムだ。

*ヨー:クルマの曲がる回転方向の動き

*ロール:クルマの傾き方向の動き

*ピッチング:クルマの前方ボンネット部分の上下の動き

今回、日産が企画した日産インテリジェントウィンタードライブは、長野県の女神湖で行われた。しかし、氷の状態が悪く氷上試乗は中止。周辺道路での雪上試乗となった。この試乗で、あらためて既存e-Powerを含め、安心・安全性と回生ブレーキの優秀さを確認する事が出来た。

加えて今回の目的である「e-4ORCE」、「EV/e-POWER」の進化もしっかりと体感した。また、FR(後輪駆動)であるスカイラインNISMOも同時に試乗。その違いを確認すると共に、FF(2WD)セレナの第2世代e-Powerの進化も体感して、非常に充実した試乗会だった。

 

 

腕自慢なら、滑りの制御が分かり易く雪道でも楽しいスカイラインNISMO

 

日産スカイラインNISMOは、420psという高出力を誇る後輪駆動の4ドアスポーツカーだ。試乗コースは、雪上の一般道。なので、安全のため横滑り防止装置であるVDC(ビークル・ダイナミクス・コントロール)は常にオンの状態としたである。

雪道での発進性は、2~3%程度の傾斜でも少しリアの空転を伴った。VDCの頻繁な細かい作動により、空転を感じながらもゆっくりと加速する。左右のフラツキは小さく、挙動を大きく崩す事は無い。だが、アクセル操作はやや慎重に行う必要がある。

加速でも、リアのフラツキなどは無く安心。だが、強めのアクセル操作では、リアの空転がみられる。VDC制御で空転は収められるが、アクセル開度によりやや大きめの速い動きがあり、ビクッとする場面もあった。

コーナー入口では、フロントが押し出される感じでハンドルの効きに弱さを感じた。ハンドルを切り込んでも手応えの変化が小さいので、若干不安になり易い。

コーナリング中にアクセル操作を行っても、車両の姿勢は崩れにくく安定している。コーナー出口付近で徐々にアクセルを踏んで加速していくと、やや大きめのリアの滑り出易い。こうしたときも、VDC制御がすぐに介入して姿勢を安定させてくれるので、スピンモードに入ることはない。

フットブレーキは、路面状況に左右されて、交差点付近の滑り易い路面では比較的早めに滑りが発生してABSが作動する。郊外の雪上路面では、それほど慎重にならずにフットブレーキが踏めて不安感の無い減速が良い。

また、圧雪の進行方向の溝(ワダチ)や、新雪の抵抗でフロント/リア共に速い小さな横方向のフラツキを感じる、進路を乱すほどではないけれど常に緊張感が続く。

良くも悪くも、スカイラインNISMOは、FRらしいアナログ的な挙動を感じられた。腕が立つドライバーなら、自由自在にドリフトを楽しめる雰囲気もあり、とても楽しめる1台だと感じた。次回は、是非広い低μ路でVDCをOFFにした思いっきり走りたい。

日産スカイラインNISMO 雪上試乗

日産スカイラインNISMO 雪上試乗

日産スカイラインNISMO 雪上試乗

 

 

リヤの安定感が抜群だったFF、第2世代「e-Power」のセレナ

 

セレナe-PowerハイウェイスターV(2WD/FF)は、その駆動方式から滑り易い雪道走行に少々不安を感じていた。しかし、FF(2WD)車を感じさせない走行性を提供してくれたのには驚いた。特にリアの接地性に優れ4WDの様に安定していたのだ。これなら、街中で多く見受けられる奥様ドライバーなども安心して雪道を走れ、突然の降雪や早朝・夕方のアイスバーンも大丈夫だろう。

雪道での発進性は、タイヤの空転によりVDC(ビークル・ダイナミクス・コントロール)の介入が早く発進はやや鈍い。発進から巡航しようとする40km/h付近までの加速も少し弱く時間がかかってしまう。クルマのフラツキは非常に小さく安定していて不安感はない。

コーナー入口のフットブレーキはABSの介入が早く減速感がやや弱い。対してe-Powerの回生ブレーキは、強めの減速感がある。そのため、回生ブレーキに頼った方が減速感に加えて、接地感もあり格段に安心して走れる。

コーナリング中のアクセル操作では、クルマのフラツキを少し感じるが、姿勢は崩れることなく安定感がある。

コーナー出口付近でアクセルを徐々に踏んでもフロントが外側に逃げる様子は無い。リアも駆動がかかっているような接地感があり、コーナリングで非常に安心感がある。

ブレーキングは、滑り易い路面ほどe-Powerの回生ブレーキを積極的に使う方が有効で、安全であることが理解できた。

日産セレナe-POWER雪上試乗

日産セレナe-POWER雪上試乗

 

 

e-Powerとe-4ORCEを組み合わたエクストレイル

 

次に試乗したのは、AWDシステムがインテリジェント4×4からe-4ORCEへと進化したエクストレイルに試乗した。

第1印象は、SUV特有の車高を感じるピッチング(上下の動き)やロール感(左右の動き)が小さく非常にスムーズで、軽快に滑り易い雪道のコーナーを抜けて行き心地良い。これは、e-4ORCE制御が車両重量の影響を受け易いのか、このエクストレイルとのバランスが取れているのだろう。

発進・加速共に路面変化の影響があまり無く、タイヤの空転が殆ど感じられない。e-4ORCE制御の緻密さで、走行時の安定・安心感がある。

一部固まった雪のワダチや新雪でのフラツキも抵抗感は無く、滑り易さなどを全く感じさせないほどだ。

コーナーの進入でも、e-4ORCE制御による回生ブレーキが十分な減速感と制動力を発揮してフラツキも無く安心感がある。フットブレーキでのABS制動時には振動や音が発生し減速感でも劣っている印象。そのためABSに頼るよりe-4ORCEでの回生ブレーキの多用が安全性、安心感共に高いと感じた。

雪道のコーナリング中も、前後の緻密で瞬時の駆動バランス制御により、オンザレール感覚で軌道を外れないコーナリングが可能だ。コーナー出口でもしっかりと思った通りのラインを描いてくれる。

日産エクストレイルE-POWER雪上試乗

日産エクストレイルE-POWER雪上試乗

日産エクストレイルE-POWER雪上試乗

 

 

BEVのアリアB9 e-4ORCEリミテッドの雪上性能は?

 

さてさて、大トリは電動AWDの「アリア」だ。重量がエクストレイルより330kg程重くなり雪上走行は不安だった。だが、発進と停止は…、何事も無く平穏に試乗コースに向かってくれた。

e-4ORCE制御の回生ブレーキは、モーターとのバランスが良くきめ細かく制御していることをドライバーに感じさせない。

しかし、やはり車重が重いのか、減速感はしっかりあるのだが制動距離がやや長くなっている。クルマの動きもエクストレイルの様な軽快さは薄れている。

とはいえ、雪道での滑りは全く感じられず、制御自体も分からないほど自然でとにかく走りやすい、

雪道での発進性は、e-4ORCEによる駆動制御が効いていて、滑りも感じられず普通に加速して雪上であることを感じさせない。アクセル踏量に応じた加速で雪のワダチや新雪の抵抗感も弱くフラツキは無く安定している。

コーナー進入時の減速では、さすがにクルマの重さを感じる。特にフットブレーキでのABS作動介入は早く減速感がやや弱い。回生ブレーキでは、フロントが押し出されそうな感覚はあるが、緻密な制御で減速感も十分。フラツキも無くクルマは安定していた。

コーナー中は、外側に向けての慣性力も小さくい。適度にリアの回り込みがあり、オンザレール感覚のコーナリングで安定している。

アクセル操作に対しては、反応はやや穏やかで安心感がある。路面状況やハンドルやアクセル操作など、色々と試したが、常にクルマは安定しており安心感があった。

アリアでは、e-4ORCEによる前後モーター、ブレーキの制御を車体コントロールECUで集約して行うため処理と反応が速くいのが特徴。タイヤ4輪の性能バランスを緻密に制御して安定性・安心感を向上させているので、誰が乗っても不安なく走れる。

ただ、一点気になったことがある。クルマのロールやピッチング、ヨーの動きに対して、私自身の感覚と微妙なズレを感じた。そのせいか、少々クルマ酔いの様な状態だったが、そのうちに慣れてきたので良しとしよう。

日産アリアB9 e-4ORCEリミテッド雪上試乗

日産アリアB9 e-4ORCEリミテッド雪上試乗

日産アリアB9 e-4ORCEリミテッド雪上試乗

 

 

電子制御はあくまでもドライバーのサポート役

 

今回、一般道の雪上で試乗したe-4ORCEの2車種(電動ARIAとe-Powerエクストレイル)は、特に低μ路(雪上)において、それほど緊張なく安心して走ることができた、高精度の制御と緻密さで「オッ」とか「アッ」と言った場面はほとんど無かった。発進・加速・コーナリング・制動を通してクルマは非常に安定している。

しかし、そんな安定したe-4ORCEでも、調子に乗ってオーバースピード、急な操舵を行うとクルマの走行限界を超えてしまう。そうならないために、自制心とコーナーでは十分な減速、路面状態や対向車、コーナー途中に障害物などが無いかを確認しつつ、コーナー出口付近から少しずつアクセルを踏んで加速する基本的な操作・走行することは重要だ。

安心・安定のe-4ORCEだけに、ついつい速度は上がってしまう傾向にある。そうならないように、常に速度メーターで走行状態を把握して欲しい。

<レポート:河野達也

 

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日産スカイラインNISMO新車情報

 

 

[車両価格]

・ARIYA B9 e-4ORCE limited(91kWh)4WD ¥7,900,200

・X-TRAIL e-4ORCE AUTECH e-4ORCE Advanced Package 4WD ¥5,329,500

・SKYLINE NISMO 2WD/FR ¥8,470,000

・SERENA e-POWER ハイウェイスターV 2WD/FF ¥3,686,100

 

[スペック]

・ARIYA B9 e-4ORCE limited(91kWh)4WD

全長4,595mm×全幅1,850mm×全高1,665mm

ホイルベース:2,775mm

トレッド:Front 1,575mm/Rear1,580mm

車両重量:2,230kg

バッテリー:リチウムイオン電池 352V、91kWh

モーター:交流同期電動機

フロント定格出力45kW

最大出力:160kW(218PS)/5,950-11,960rpm

最大トルク:300N·m(30.6kgf・m)/0-4,392rpm

リア 定格出力45kW

最大出力:160kW(218PS)/5,950-10,320rpm

最大トルク:300N·m(30.6kgf・m)/0-4,392rpm

WLTCモード(国土交通省審査値)

一充電走行距離 560km

交流電力量消費率 187Wh/km

装着タイヤ:BRIDGESTONE VRX3 255/45R20

 

・X-TRAIL e-4ORCE AUTECH e-4ORCE Advanced Package 4WD

全長4,675mm ×全幅1,840mm×全高1,715mm

ホイルベース:2,705mm

トレッド:Front 1,575mm/Rear 1,580mm

車両重量:1,880kg

第2世代e-POWER発電用エンジン:DOHC水冷直列3気筒ターボ、1.497L

最大出力:106kW(144PS)/4,400-5,000rpm、

最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/2,400-4,000rpm

モーター:交流同期電動機(リチウムイオン電池)

フロントモーター

最大出力:150kW(204PS)/4,501-7,422rpm

最大トルク:330N・m(33.7kgf・m)/0-3,505rpm

リアモーター

最大出力:100kW(136PS)/4,897-9,504rpm

最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)/0-4,897rpm

装着タイヤ:BRIDGESTONE VRX3 255/45R20

 

・SKYLINE NISMO 2WD/FR

全長4,835mm×全幅1,820mm×全高1,440mm

ホイルベース:2,850mm

トレッド:Front 1,540mm/Rear 1,560mm

車両重量:1,760kg

エンジン:DOHC筒内直接燃料噴射V型6気筒ターボ  2,997L

最高出力:309kw(420PS)/6,400rpm

最大トルク:550N・m(56.1kgf・m)/2,800~4,400rpm

装着タイヤ:BRIDGESTONE VRX3 Front 245/40R19、Rear 265/35R19

 

・SERENA e-POWER ハイウェイスターV 2WD/FF

全長4,765mm×全幅1,715mm×全高1,870mm

ホイルベース:2,870mm

トレッド:Front 1,475mm/Rear 1,485mm

車両重量:1,810kg

エンジン:DOHC水冷直列3気筒 1,433L

最高出力:72kw(98PS)/5600rpm

最大トルク:123N・m(12.5kgf・m)/5,600rpm

モーター:交流同期電動機(リチウムイオン電池)

最高出力:120kW(163PS)

最大トルク:315N・m(32.1kgf・m)

装着タイヤ:BRIDGESTONE VRX3 205/65R16