「入管法改定の影響で強制送還に怯えている外国人は数あれど、こんな他人の日本人老夫婦をケアしながら同居してるケースはかなり珍しいんじゃないかな。ちょっと話を聞いてあげてほしい」
先日、長年、市民記者育成のワークショップを共に運営している、ジャーナリストの下村健一さんからそんなメッセージが市民メディア「8bitNews」に寄せられた。
80代、70代の老夫婦を、アフリカ出身の男性が世話している。半年前から同居して、生活に不自由が出始めた夫婦を、長年連れ添った家族のようにケアしながら暮らしているという。ところが、男性は難民申請が繰り返し却下されきた、仮放免の立場。
現行の入管法では、難民申請手続き中の外国人を強制送還することはできない。しかし、来月6月10日に施行される改定入管法では、3回目以降の難民申請だと、手続き中でも強制送還が可能になる。男性はまさに、3回目の難民申請を却下され、現在異議申し立ての結果を待っているところだ。
数週間後には新たな法制度が始まってしまう。家族は今、嘆願書、署名、発信、あらゆる手段を使って、男性が突然、強制送還になることがないよう声をあげ始めている。老夫婦と男性は、一体どのような「家族」なのか。
北海道放送の記者出身で、退職後、難民申請者や仮放免の外国人の問題を取材し続けてきた、8bitNewsメンバーのジャーナリスト構二葵とともに現場の埼玉県桶川市を訪ねた。JR桶川駅で娘の操さんが出迎え、私たちを家まで案内してくれた。
「気難しい父だから、最初は衝突もあったみたいですが、今はとても仲良くやっているみたいで。嬉しいです」自宅の呼び鈴を鳴らすと、早速出迎えてくれたのは、仮放免の外国人。ピエールさんだった。
ピエールさんは、アフリカ出身の難民申請者。顔と本名を出さないことを条件に私たちの取材に答えてくれた。日本に避難してきた頃のことをこう振り返る。
「2004年から日本に来まして、戦争のこと民族と政治の問題にあって、私のお父さん殺されて、もう息子も亡くなって、大変なことにあって、ジンバブエに最初に逃げていって。ジンバブエから日本に逃げてきまして」母国では精神科医になる勉強をしていたピエールさん。日本に逃れてからは、1年に渡り入管に収容されていたこともあった。
「刑務所だからね。フリーじゃない。刑務所。よくない」ぽつりぽつりと言葉を選ぶように、収容されたことを振り返った。
現在は、一時的に入管の外で暮らすことができる「仮放免」の状態。働くことは禁止され、移動の自由も制限されている。そんな、ピエールさんを自宅に迎え入れたのは、伏見功(いさを)さんと、美恵子(みえこ)さん。現在ピエールさんは、伏見さんご夫婦の家で3人暮らしをしている。体が不自由な伏見さんご夫婦に、仮放免者のピエールさんとの同居を提案したのは、離れて暮らす娘の操さんだった。理由をこう語る。
「いちばん最初はウィシュマさんで、こんなことがあるのかって。何かしたいなと思ったんだけど何していいかわからなくて、一人だったらなんとかなるかなって思ったのと/いくら老人だって頼ってばかりは嫌だろうし、難民とか仮放免だから働けないだけで頼ってるのは嫌だろうし、だからできるところで支えあったらいいんじゃないかなって」。
一方、迎え入れた功さんの言葉には含蓄がある。「とにかく前例がないのでその意味でちょっと不安だったんですね。でも操から話を聞いて、ダメで元々なので、じゃあやってみようかと。そして、会った時に、一言こういう風に言ったんですね。「助け合わないか」「もし、自分のことを助けてくれたらば、俺もできることはやるよ」そういうふうに言ったんです。まっすぐ目を見て、二人で喋ったんですね️」。
さらに、美恵子さんも「私は大賛成でした。(実際一緒に暮らしてみていかがですか?)すごく優しくて良い人ですよ。ね!」今、ピエールさんは、夫妻の食事を日々作っている。元々は中華料理店の料理人だった功さん。台所に立つピエールさんの背中から、調味料の量や調理の手順など、事細かく伝え育ててきた。
功さんは。「その前は宅配で弁当を取ってました。とっても不味くてとっても高かった。(今は)2人で協力して作ります。衣食住のうちに食が一番お金がかかると思ったんですね。結果論から言うと、食費は半分に減りました。(元々お2人だけで住んでる時よりも)半分に減りました。しかも美味しくて、全てがうまくいってます」。
功さんは、さらに、ピエールさんとの忘れられない会話があります。「こういう身ですから、トイレのことなんかも不自由するんですね。手伝ってくれます。かえってこっちの方が気兼ねして、良いから良いからって。ピエールは「だって家族じゃないか」って。そんなん何回もいいからいいからって言わないで。これって昔の日本じゃないかって思いました。「だって歳をとったお父さんの下の世話をするのはごく当たり前じゃないか」って。「もし下の世話をしなかったらそれは良くないよ」それ聞いた時は流石にびっくりしました(どうしてそう言ったのですか?)From first meeting, I feel love father to me.最初に会った時からお父さんの僕に対する愛を感じていましたから」。
ピエールさんは、笑いながら功さんを見つめてこう言葉にした。「お父さん亡くなったけどファミリーもないし、その後最初はお父さんに会って、なんか新しいお父さん心の中に入った」
功さんへの気持ちを語るピエールさんに、美恵子さんはすかさず自分を指差し「この人は?」と聞いた。すると「お母さんも!お母さんもですよ。それがいちばん、普段から本能的だって。だから本能だって言っています」と言って、部屋には笑い声が響き渡った。
そうした中、今日28日、ピエールさんは仮放免の延長手続きで、品川の出入国在留管理局を訪ねる。延長が認められなかったら、その場で強制送還されてしまうのではないかという恐怖もある。
伏見さん夫妻は。「もしかすると、ピエールは強制帰国の可能性があるかもしれない、そういう風に言ったんですね。その瞬間ねまるで漫画みたいにね、この人の顔がね上から下までスーって変わりました。おおすげえなって思ったです」。
「(その時お母様はどう感じたんですか?)涙が出てきちゃった…お父さん、涙が出てきたんですけど」。
ピエールさんの在留資格を求める嘆願書には、2500を超える署名が集まりまった。その一人一人に向けて、ピエールさんは手紙を綴った。
「心から感謝します。神が皆様を祝福してくださいますように。神があなたの心の願いを叶えてくださいますように」
6月10日、改定入管法が施行される。ピエールさんは。「(もし日本を出ていかなきゃいけなくなったらどうなってしまうんですか?)んー…それは大変ですね、それは大変です。考えたくないです。もうすぐ眠らなくなっちゃう、そういうの考えたら」。
家族になりたい。その想いからピエールさんと伏見さんご夫婦は、いま養子縁組の手続きを進めている。
最後に、堀から質問を投げかけた。
「何を今一番日本人に伝えたいですか?」
「大好き」
きょうの、仮放免延長手続きへは功さんも付き添うという。少しでも力になればという切実な思いからだ。
引用元 https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/81dd35744353e34618f27503e65cdfb32524c1b7
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